コラム
2023.12.20
シフト作成におけるAIの活用方法とは?AIの基本と留意点
AI
シフト作成
「AI(人工知能)を活用したシフト作成システム」が増えています。AIが自動的に最適なシフトを作成してくれるイメージを持つ方は多いと思いますが、具体的にどういうことなのでしょうか。
当コラムでは、AIを上手く活用するための基本的な考え方や、AIを活用したシフト作成システムでどんなことができるのかをお伝えします。ぜひ参考にしてください。
目次
1.AI(人工知能)の基本知識
AI(人工知能)を理解するため、まずはAIにはどの様な種類のものがあるのか、AIの手法や適用分野を把握しましょう。
それぞれのAI手法には、適している分野とそうでない分野が必ずあります。この違いを理解することも重要です。
(1)AI(人工知能)にはどのような種類がある?
AI(人工知能)はその名の示すとおり、人工的に人や生物の知能を再現したものです。
たとえば
- ①将来を予測したり物事を分類したりする知能
- ②多くの組み合わせから最適なものを選択する知能
- ③言語処理をする知能
- ④画像を認識する知能
など、さまざまなものがあります。①〜④についてまとめると、以下の通りです。
①将来を予測したり物事を判断したりする知能
AI(機械学習)に学習対象となる“学習データセット”を与えることで、機械学習が学習した結果を利用して、【将来の予測】をしたり、【未知の状況を判断】したりします。近頃よく聞く「ディープラーニング」もこの機械学習の一手法です。
②多くの組み合わせから最適なものを選択する知能
AI(進化的計算)の典型例である「遺伝的アルゴリズム」では、データを遺伝子で表現した「個体」を複数用意し、適応度の高い個体を優先的に選択して交叉・突然変異などの操作を繰り返すことで、全探索することなく、効率良く最適な解を探す方法です。
AI(群知能)は、魚や昆虫の群れなどの生き物の行動を模倣することで最適解を求める方法です。生物は獲物を獲得するための最善の方法や、餌のある場所への最短経路を探す方法などを本能的に持っていますが、その行動を模してシステム的に最適解を求めようとする方法です。
③言語処理をする知能
AI(自然言語処理)は、私たちが普段使用している日本語や英語などを扱うことができる人工知能です。具体的には、文書検索や文書自動校正、機械翻訳などがありますが、自然言語の特徴としては、文の意味や解釈が一意に決まらない曖昧さがあります。また、自然言語に対比するものとして、プログラミング言語に代表される人工言語があります。
④画像を認識する知能
AI(画像認識)は、人の視覚系が有している役割と同じように、目の前にある画像の特徴を読み取り「その画像に何が写っているのか?」を識別する技術のことです。AIが数多くの画像データから画像の特徴を学習し、その学習データをもとにして「画像に写っている人や物の識別」を行うことができるようになります。
(2)AI手法と適用分野について
次に、これらのAI手法がどのような分野で利用されているかを見てみましょう。
①機械学習
売上予測、需要予測、株価予測、タクシー配車予測、電力需給予測、倉庫内の自動仕分け、入館時の顔認証など、実に多くの分野に応用されています。
これらは、機械学習に多くのデータを読み込ませて反復的に学習させ、そこに潜むパターンを見つけ出すことで予測や分類などを行う技術を応用しています。
②進化的計算、群知能
①の機械学習とは異なるアプローチにより、授業の時間割表、鉄道のダイヤ編成、最短経路検索、配達ルート最適化など、人の経験や勘を頼りに作成するものを、人に代わって進化的計算というAI手法が行ってくれます。生物の種が環境へ適応するときの遺伝学的変化の諸概念(染色体の交叉・突然変異・自然淘汰)を問題解決方法に見立ててその解を探し出します。
群知能の代表的なものとしてよく取り上げられるのが、巡回セールスマン問題です。これは、セールスマンが所定の複数の都市を1回だけ巡回する場合の最短経路を求めるというものです。一見単純な問題に見えますが、都市数が増えていくと爆発的に計算量が増えて解決が困難となります。この問題を、蟻コロニー最適化を用いることにより、都市数が増えたとしても少ない計算量で解くことが可能になります。
③自然言語処理
自然言語処理は、私たちの身の回りで既に多くの分野で応用されています。例えば、日本語⇔英語の機械翻訳、結果を音声データに変換して伝える音声対話システム、日本語を入力したら自動変換してくれる文字変換予測、などがあります。
④画像認識
画像認識も私たちの身の回りで既に多くの分野で応用されています。例えば、顔認証システム、自動運転技術、ロボット、不良品検知システム、などがあります。
また、機械学習の特徴である大量のデータからパターンを見つける「機械学習」を画像認識に応用することで、より効率的かつ正確な画像認識ができるようになりました。
2.シフト作成に利用できるAI手法とは
ここからは、シフト作成でのAI(人工知能)活用について説明したいと思います。シフト作成に応用できるAIはいくつかありますが、ここでは機械学習の一手法である『ニューラルネットワーク』を取り上げてみます。
(1)機械学習「ニューラルネットワーク」
ニューラルネットワークは人間の脳の神経回路を模した数理モデルであり、入力層、中間層(隠れ層とも呼ばれます)、出力層から構成されます。
入力層から入ってきた情報は中間層へ伝えられ、中間層はその情報に重みを付けて出力層へ渡します。出力層は中間層の情報の重みから、入ってきた情報に対する答えを出すという仕組みになっています。
なお、ディープラーニングはこのニューラルネットワークの発展版とでもいうべきもので、中間層を何層にも重ねて、厚く深くしたものです。
(2)AIを用いたシフト作成の流れ
ではこのニューラルネットワークがシフト作成ではどのように作用するか、実際に見ていきましょう。ここでは、ある小売店の従業員のシフト計画を、店長の代わりに自動作成するAIを考えてみます。
まず教師データとして過去データをニューラルネットワークに学習させます。
過去データは入力(条件・状況)と出力(正解)の2つに分けて与えます。今回の例ならば、「店長がシフト作成の際に考慮した条件や状況」が入力データに当たり、「当時店長が実際に作成したシフト計画」が出力データに当たります。
これらの2つは対の形で与えられ、例えば「過去のある日にある従業員は勤務可能だったか」「その従業員はその前日に勤務していたか」といった条件や状況だった時、実際に「店長はその日にその従業員を勤務させた(させなかった)」という正解を学習していきます。
教師データの入力(条件・状況)例
- 「4月1日、従業員Aは午前も午後も勤務可能だった」
- 「4月1日、従業員Bは午後から勤務可能だった」
- 「3月31日、従業員Aの勤務シフトは早番だった」
- 「3月31日、従業員Bの勤務シフトは遅番だった」
- 「4月1日午前に従業員Aにしかできない業務があった」
- 「4月1日午後に従業員Aにしかできない業務がなかった」
- 「4月1日午前に従業員Bにしかできない業務がなかった」
- 「4月1日午後に従業員Bにしかできない業務がなかった …
教師データの出力(正解)例
- 「4月1日の従業員Aの勤務シフトを早番にした」
- 「4月1日の従業員Bの勤務シフトを遅番にした」
膨大な量の過去データを、条件と正解という対の形で学習させることで、ニューラルネットワークは「どういった条件や状況の時にどういった勤務計画を立てればよいのか」というルールを見つけ出し、店長のシフト作成を再現するAIとなります。
3.AIのシフト自動作成で何ができる?
AI搭載のシフト管理システムでどのようなことができるのか、機能を紹介します。
(1)設定条件を考慮したシフト作成
事前に設定した条件(必要人数、スキル、休憩時間、連続勤務日数など)をもとに、AIが最適なシフトを自動で作成。
シフト作成の時間や手間を大幅に削減できます。
公休や土日休みの数、希望の反映度合いもAIで自動調整可能です。
R-Shiftの場合、レジ実績から客数や買上点数を予測し、レジの適正な稼働台数の算出する機能および どのレジに誰が入ったかの実績を確認できる機能も搭載。
レジ業務の適正な人員配置を実現します。
(2)シフト調整
システムが作成したシフトは、管理者が細かく調整できます。
シフト変更や欠員補充などのイレギュラーな事態にも柔軟に対応。
(3)作成内容へのアドバイス
シフトの作成時、法令に基づいた内容になっているか、一部のメンバーに負担が偏っていないかなどを判断し、配置についてアドバイス(アラート)を表示する機能もあります。
4.シフト作成でAIを活用するメリット
(1)シフト作成の時間や手間を削減
AI搭載のシフト作成システムは自動でシフトを作成できるため、作業時間を大幅に削減可能です。
シフト完成後の変更や欠員補充などのイレギュラーな事態にも柔軟に対応できます。
シフト作成に使っていた時間を店舗運営や従業員のマネジメントに回すことができます。
(2)シフト表のミスが減り品質が向上する
手動でのシフトにミスが生じるたび、修正版を発行してきた店長さんも多いのではないでしょうか。
AI搭載のシフト作成システムなら最適なシフト表をミスなく作成でき、あとから修正する場面が激減します。
(3)スタッフの不満が減りモチベーションアップ
全員にとって公平なシフトを組むのは至難の業。
個々のスキルにあった仕事内容を割り振るのも大変な作業です。
AIによるシフト作成なら、公平性を保ちつつ個々のスキルに応じたシフト内容を自動で組むことができるため、従業員の満足度向上・モチベーションアップに繋がります。
5.シフト作成におけるAI活用の留意点
最近のシフト管理システムは、コンピュータ性能の向上やAI技術の進展などにより、大幅に機能強化されています。
非常に多くのシフトの組み合わせの中から、最適なシフトを作り上げるには、やはり従来の技術の延長では難しいといわざるを得ません。
(1)AIの限界を正しく理解する
「AIが自動的にシフトを作成してくれるから、シフト作成が簡単にできる!」というような話しが多くなっているように思いますが、「AIだから簡単」「AIだから正確」というような考え方は、あきらかに間違っています。
例えば、前述のような「店長のシフト作成の特徴をAIが学習して、店長が作るシフトを自動的に作成します」と言った場合、
- 店長がムリ・ムラ・ムダの多いシフトを作成していた
- 店長が交代して新人店長がシフトを作るようになった
- 店長と副店長が交代でシフトを作成している
などによって、シフト作成時間は短くなって効率化できたとしても、決して精度の高いシフトができると言う保証はありません。
AIは人間のやっていることを忠実に再現しようとするだけです。この点を誤解している人が結構多くいるのではないでしょうか。
シフト管理システムは、「シフト作成の効率化」「シフトの精度向上→現場のムリ・ムダ・ムラの削減」を実現できることが求められます。確かにAIは強力なツールですが、AIだけで全てが解決する訳ではありません。AIの強みと弱みをよく理解した上で、シフト管理システムの導入を推進したいものです。
(2)ルールがあってのAIによるシフト作成
シフト管理システムはあくまでもツールとしての位置付けですから、前提となる明確なルールが無いと正しく機能しないことは認識すべきです
ですから、「AIに任せれば大丈夫」などという考え方は決して正しくはありません。まずは、会社として明確なルールを決めることからスタートしましょう。
また、シフト管理システムを検討する際、どうしても「シフトの作成負荷を少なくしたい」ということに注目しがちですが、目的はそれだけではないはずです。”業務改善”という視点で考えると、求められるのは「日別・時間帯別にムリ・ムラ・ムダが極力出ない勤務シフト表」。日別・時間帯別の過不足人時が極力少なく、かつ偏りがないものが最適なシフトといえます。
一部のAI機能搭載のシステムが言っている「シフト作成者のやり方に近い勤務シフト表を自動で作成」では、業務改善には決して結び付きません。単に、シフト作成作業の合理化だけになってしまいます。
小売業・サービス業が目指すべき勤務シフト表は、業務改善に結び付いて初めて意味のあるものになるといえます。ですから、会社が目指す「あるべき姿」を、月間、日別、時間帯別に必要な人時、すなわち「必要人時」という形で具現化することが必要になるのです。
そうすれば、日別・時間帯別にムリ・ムラ・ムダが極力出ない「勤務シフト表」によって、大きなコスト削減を実現することが可能になります。この点を是非とも理解してもらいたいと思っています。
AIを活用したおすすめシフト管理システム「アールシフト」
(1)小売業・サービス業の導入店舗数1万店超
アールシフトは、小売業やサービス業のシフト管理に特化したシステムです。
おかげさまで2020年〜2024年と5年連続で「登録ID数1,000以上の小売業」における導入数No.1(※東京商工リサーチ調べ)となりました。
全国展開しているスーパー、生活雑貨店、レンタルビデオ店、衣料品店、ホームセンター、映画館、空港、コールセンターなど幅広い業種の企業様に選ばれています。
(2)柔軟にカスタマイズ可能
選ばれる理由の一つが、カスタマイズの柔軟性です。
シフト管理においては企業ごとに設けている独自ルールや細かな要望があるかと思います。
アールシフトなら800を超える標準機能から独自にオーダーメイドが可能です。
「店内レジと屋外レジの違いを考慮して割り当てたい(ホームセンター向け)」
「薬剤師と登録販売者を確実にシフトに入れたい(ドラッグストア向け)」
といった業種特有のシフト管理方法も、標準機能で既に搭載されています。
標準機能だけでは対応しきれない個別カスタマイズにももちろん対応。
お客さまの企業特性を理解した上で、設定のチューニングを行ないます。
(3)シフト管理+人時生産性向上を同時に実現
アールシフトではレイバースケジューリング理論(LSP)や統計分析手法、AI手法などを全面採用。仕事と人をMH(人時)で把握し、ムリ・ムダ・ムラの最も少ない効率的なシフトを実現しました。
誰が使用してもスピーディに高精度なシフト表が作成できるよう、当社独自の最適化手法を備えています。
(4)直感的に操作できる現場志向のシステム
高精度なシステムでありながら、直感的な操作でシフトが自動作成できるよう、インターフェースにも徹底的にこだわりました。基本操作はマウスだけでOK。公休と有休の色分け表示や、白黒印刷したときの見やすさなど、現場の方々が求める機能を実装しています。
システム自体の素早いレスポンスも好評です。
アールシフトでは、シフト管理システム導入を検討中の企業様向け体験利用プランや、メイン機能の使い勝手がわかるデモ動画を用意しています。
シフト管理方法について見直しを考えているご担当者さま、ぜひお気軽にお問い合わせください!